祖父の代から受け継がれ、約60〜70年の時を重ねてきた一本の皐月。特徴的な根張りと低くまとまった樹形には、三代にわたる仕事が刻まれています。
今回お話を伺ったのは、栃木県矢板市の和洋園・和氣佳洋さん。一本の皐月が歩んできた歴史と、その魅力について伺いました。
この皐月は、和氣さんの祖父の代に家に迎えられました。一度はお客さまのもとへ渡りましたが、約20年間、手入れは和氣さんの家が続けていました。約6年前に戻ってきた後、和氣さんが枝棚を整え、現在の姿に仕上げています。
なかでも特徴的なのが、幹の根元から広がる「根張り」です。祖父と父が毎年欠かさず根を整えてきたことで、力強い根張りが育まれました。
もともとは地面で育てられ、高さが約1メートルもあったというこの木。祖父が幹を半分ほどの高さに切り詰めたそうです。切り口の傷は年月を経て巻き込み、現在の独特な幹の表情につながっています。
皐月の魅力は、幹や根張りだけではありません。花の季節には、たくさんの花が木全体を彩り、華やかな姿を見せます。
皐月には多彩な品種があり、花の色や模様もさまざま。和氣さんは、この大きさの木に花が咲くことで生まれる迫力も、大きな魅力だと話します。
花のない時期には幹や枝の趣を、花の季節には鮮やかな彩りを。同じ一本の木が季節によって異なる表情を見せてくれます。 (※ 写真一枚目、左下)
和氣さんは、皐月の魅力の一つに、自分の手で素材から盆栽をつくり上げていける面白さを挙げます。
今回の作品は、展示会で賞を受け、現在はほぼ完成形と考えているそうです。それでも、根の状態に応じた植え替えなど、維持管理は欠かせません。
皐月の寿命は一般的に100〜200年ほどとされます。和氣さんは、この木ができるだけ長く生きられるよう、これからも管理を続けていきたいと話してくれました。
三代にわたって育まれた根張りと樹形、そして季節ごとに変わる花の表情。一本の皐月には、木そのものの個性と、それを育ててきた人々の仕事が刻まれています。
BONSAI LUXEは、盆栽を通じて、日本の四季や美意識を空間に届けることを目指しています。この皐月が見せる季節ごとの表情も、空間に彩りと趣をもたらす盆栽の魅力の一つです。