コラム

一本の黒松に、完成はない。

一本の黒松に、完成はない。

2026年10月21日 15:34

日本盆栽協会賞 黒松| 盆栽職人・福島孝之さん インタビュー

樹齢約150年の黒松。長い年月を重ねたその姿には、木が持つ個性と、それを引き出す職人の技術が表れています。

今回お話を伺ったのは、千葉県印西市の盆栽職人、福島孝之さん。

福島さんが大切にしているのは、”よりよい姿を追求し続けること”。展示会に出展されていた黒松を通じて、その盆栽づくりへの考え方を伺いました。

- 盆栽に、完成はない。

「未完成。完成はない」

盆栽との向き合い方について、福島さんはそう語ります。

一見すると完成されたように見える盆栽も、職人にとっては、それで終わりではありません。木の状態を見つめ、よりよくするために何ができるのかを考え、必要に応じて手を入れていく。

福島さんが大切にしているのは、常に木の”悪いところ”を見つけ、改善していくことです。

ただし、それは単純に欠点をなくしていくということではありません。

木が持つ特徴を活かしながら、全体としてよりよい姿を目指していく。今の姿だけでなく、その先にどのような姿が生まれるのかまで考えることが、盆栽づくりには欠かせません。

- 変えられないものを見極め、木の未来をつくる。

福島さんは、良い木を見極めるうえで大切なのは、「古さと形」だといいます。

「ボディは直せないが、枝は直せる」

幹そのものの形を変えることは難しくても、枝は手を入れることで整えていくことができます。だからこそ、素材となる木が持つ魅力を見極め、その特徴を活かしながら将来の姿を考えていくのです。

今回の黒松についても、福島さんは幹の模様や樹皮の特徴を意識しながら、手を入れるべきところを見極めていました。

木と向き合い、集中して取り組む。その時間にこそ、盆栽づくりの楽しさがあると福島さんはいいます。

一本の盆栽には、現在の姿だけでなく、職人が思い描く未来も込められているのです。

一本の木が、空間にもたらすもの。

盆栽の魅力は、目に見える形の美しさだけにあるのでしょうか。

今回、福島さんのお話から感じたのは、一本の木の姿には、それまでの長い年月と、これから先の未来が共存していることです。

樹齢約150年の黒松も、今の姿だけで完結しているわけではありません。職人の感性と技術により、その魅力は少しずつ形づくられています。

BONSAI LUXEもまた、盆栽を単に空間に飾るのではなく、その木が育んできた時間や個性、日本の美意識を空間の中で感じられるものとして届けたいと考えています。

職人の手によって引き出された木の魅力を、空間の価値へとつなげていく。一本の盆栽との出会いが、その場所で過ごす人に新たな発見や豊かな時間をもたらすことを目指しています。